ギターやベースなどの楽器を発送する際に最も重要視したいのが「故障などの事故がなく無事に届くこと」です。
楽器の中でも、ギターやベースなどの「竿もの」と呼ばれるものは、ネックが折れてしまっては一大事。
事故を起こさずに送るために重視すべき点は4つです。
- ギター・ベース用の梱包ダンボールを購入。エアキャップなどの緩衝材を使う
- 配送会社の候補は、クロネコヤマトなどを優先する
- 配送品目には必ず「楽器」と明記する
- ダンボールには各種「ケアマーク」を記載。または注意シールを貼る
この記事の筆者は、これまでに東京~北海道間の海を越えた配送を4度経験してきましたが、以上の3点を守ることで故障や事故もなく安全に運んでもらうことができました。
信頼のおける運送業者を利用したとしても、運ぶ人の違いや偶発的な事故もあるので絶対に安心とは言い切れませんが、これまでの経験を参考にギターやベースを安全に運んでもらうための梱包方法・発送方法をまとめていきます。
取り扱い注意・壊れもの、などを示すマークの規格です。
ギター・ベースを発送時に確認しておくべきポイント
ギターやベースを発送する際に理解しておきたいことは以下の3点です。
- 発送コスト(梱包に使用する道具・梱包材・配送費)
- 配送業者の選定
- 梱包の方法・安全に送る方法
以下の項目で順に確認していきましょう。
ギター・ベースを発送する際のコスト・費用
梱包に使用する梱包材やダンボールには意外とコストがかかります。
スーパーなどで貰えるダンボールで自作するなどは避けた方が良いので専用のダンボールでの梱包は必須と考えておくべきです。
ギター・ベース用ダンボール | 1個1,320円 |
エアキャップ(900mm × 10 m程度) | 約1,200円 |
ガムテープ・ビニールテープ(100円ショップのものでOK) | 100円 |
配送費(配送業者・地域によって変動) | 約2,400円~ |
上記のように、1本のギターを安全に発送するには梱包代と配送費を合わせて約5,000円かかります。
もちろん、配送元と配送先の地域によっても変動するのでこれ以上の費用が掛かることもあります。
ギター用、ベース用のダンボールはそれぞれ大きさが異なりますが、楽器店チェーンの「島村楽器」で販売されているダンボールは一律1,320円(税込)で比較的リーズナブルです。
島村楽器の専用ダンボールには複数のサイズがあります。
種別 | サイズ |
---|---|
エレキギター/ベース用 | 高さ127cm(※110cm) x 幅45cm x 奥行き15.5cm |
アコギ/クラシックギター用 | 高さ117cmx幅46.5cmx奥行き19cm |
エレキギターとベースのサイズは違いますが、島村楽器のダンボールはどちらにも対応する共通のダンボールとなります。
ベースよりもサイズが小さいギターを梱包する際には、高さを調節して発送することで「170サイズ」まで縮められます。
また、島村の楽器専用ダンボールは「壊れ物」のマークや「取扱注意」、「横積禁止」のマークが記載されているので別途シールを貼る必要がないこともメリットです。
また、エアキャップについてですが、受け取り相手が自分の場合はエアキャップの代わりにタオルや服を代用し、クッション材にすれば少しコストが下げられます。
梱包方法は記事の後半でご紹介しますが、まずは下記の項目で配送業者についてチェックしておきましょう。
配送業者はどこがいい?配送サイズは?
ギター・ベースの配送は、「引越し」の場合と、メルカリやオークションなどでの取引で相手に送る場合や自分への「配送」とでは勝手が異なります。
宅配業者を利用した「配送」の場合、ギター・ベースの配送を引き受けてくれるのは主に3社です。
ギターでベースとでは少々サイズが異なりますが、専用ダンボールで発送すると結果的にどちらも「200サイズ」に該当します。
郵便局のゆうパックは最大のサイズが「170サイズ」なので、発送できるのはギターのみ。専用ダンボールを使用し、サイズ調整することで発送できます。
楽器用のダンボールをせず、自分でダンボール自体をカッターなどで加工してサイズを切り詰めれば発送も可能かもしれませんが実際に試したことはないため、おすすめはしません。
発送できる宅配業者で比較した発送費用は下記の通りです。
※2022年後半頃から各社ともに以前よりも値上げ傾向があります。
筆者の私はいつもクロネコヤマトさんを利用しています。
クロネコヤマトでの発送では、ダンボールを使用しない場合でも、ハードケースに入れたギター/ベースをエアキャップで梱包する形で発送することも可能。
ハードケースを持っていない場合、「楽器+ソフトケースのまま」での発送は受け付けてくれないので、やはり専用ダンボールが必須です。
クロネコヤマト発送での重量上限は30㎏以内です。
また、クロネコヤマトさんは、宅急便1個あたりの補償金額(責任限度額)は30万円(税込)までとなっています。
ビンテージギターなどはこの金額を超える場合が多いですし、保障金が支払われたとしても同じものが戻ってくることはないので注意が必要です。
価値の高い楽器は費用をかけてでも自分で運んだり、楽器専門のトランスポーターに依頼するのがおすすめです。
ギター・ベース発送時のおすすめの梱包方法・必要なもの
ここからは実際にギター・ベースの梱包例を解説していきます。
まず、用意するものは下記の通りです。
- ギター・ベース本体
- ギター・ベース発送用ダンボール
- ハードケース・セミハードケース・ソフトケース
- エアキャップ
- ビニールテープ(ガムテープでも可)
全て揃ったら梱包の下準備をして下記のことを行っておきましょう。
- ギター・ベースの弦を外す、または緩める(反りや指板のダメージを避けるため)
- ペグ部分・ギター底面・ネック周りをエアキャップで包む(衝撃をガードするため)
- ソフトケースの場合、内寸サイズに余裕がある場合はギター全体をエアキャップで包んでおく
- 楽器をケースに入れる
下準備はこれで完了です。
梱包方法の手順
次は実際にダンボールへ梱包していきます。
今回、例に挙げる梱包例は下記の2つの楽器+ケースを送った際のものです。
- セミハードケースに入れたベース(ジャズべ)
- ソフトケースに入れたギター(テレキャス)
セミハードケースとソフトケースの2パターンとなります。
初めてソフトケースで楽器配送を依頼した際は「ダンボールに入れるとはいえ、ソフトケースでも送れるの?」と疑問を持っていましたが問題なく発送できます。
【手順1】ダンボールを組み立てる
まずはダンボールを組み立てます。
使うテープはガムテープでも良いですが、横幅が太いタイプのビニール系テープの方が強度が強い気がします。
楽器屋さんで重量があるものを通販購入すると、ほぼすべてビニールテープで梱包されていることが多いと思います。
コスト面もあるかもしれませんが強度が強いことも要因だと予測しています。ですが定かではありません。いずれにしても強度が強いテープを張りましょう。
ダンボールを組み立てる際、端面すべてにガムテープを張るだけでなく、底面は重さで底が抜けないように十字型にも張り、補強するのがおすすめです。
▼下記の画像を参照してください。
また、角面にもテープを張り、なるべく強度が高くなるように組み立てるのが大切です。
特にハードケース+ダンボールの場合は、ハードケース自体の重さにも配慮してしっかり補強しましょう。
【手順2】ギター・ベースを入れてサイズをチェックする
上記左はギターとダンボールの写真です。縦サイズに10センチ程度の余裕があるのが分かるかと思います。
上記右側・ベースはセミハードケースで一旦サイズ感を確認。ベースはダンボールの縦サイズピッタリで、あまり縦サイズに余裕・空きスペースはありません。
実際にダンボールに入れた際のダンボール内上部の様子はこちら。
ギターは高さの問題は全くありません。ハードケースに入れた場合でも問題ないと思います。
また、ベースをハードケースに入れて発送する場合でも問題なく収まります。
やはりハードケースでの発送の方が安全性は高いと思いますが、ハードケースをわざわざ購入するのも気が引けます。
ですが、今後自分で使用するために発送するのであれば、これを機にハードケースを購入してから発送するのも一つの手かもしれません。
【手順3】エアキャップ・緩衝材を入れて封をする
上記の写真で分かる通り、ダンボールに楽器を入れるとネック部分などに多くの空きスペースが生まれます。
ダンボール内部に余白があると、
ダンボール内で楽器が暴れて持ち運びにくい = 配送時にトラブルが起きる可能性が高まる
というリスクがあるので、楽器の安全性を高めるためなのはもちろん、配達員さんが運びやすくするためにも余白を埋めていきましょう。
ここで使用するのがエアキャップです。
空きスペースにエアキャップを入れ、楽器自体がダンボール内で動かないようにします。
新聞紙などでも代用できますが、楽器が動かないようにするには相当な量の「紙」を入れることになるので、比例して重量が増えます。
費用もアップする可能性がありますし、配送時の事故につながる可能性が増えるかもしれないのでエアキャップがおすすめです。
ギター+ソフトケースの場合は、ボディ面側もサイド面側にも多くの空きスペースが生まれるので、ソフトケースごとエアキャップで3重~5重にも包んでもOK。
ダンボールに入れ、更に空きスペースにはエアキャップを詰めてダンボール内に遊びがないように梱包します。
余白部分にエアキャップを入れ、組み立てた際と同様に上面でも角までしっかりテープで封をします。
これで梱包は完了です。
【手順4】発送する・クロネコヤマトでギターベースを発送
冒頭でも触れたように、楽器の配送依頼ができる大手配送業者は、日本郵政・クロネコヤマト・佐川急便の3社。(これら以外にもあるかと思います。)
今回も、これまで複数回に渡って無事に楽器の配送をして頂いたクロネコヤマトさんに依頼。ヤマトさんで発送する際の例をお伝えしていきます。
ヤマトさんの場合、ギター・ベースなどの配送は「楽器配送サービス」などの特別便ではなく、通常の宅配便と同様の扱いです。
ただし、梱包内容には「楽器(ベース・ギター)」を明示しておくことが大事です。
クロネコヤマトで発送する際のポイントは下記の通りです。
- WEB・スマホアプリからの集荷を申し込む(デジタル送り状を選択することで60円割引される)
- 自宅まで集荷してもらう(ヤマトの事業所が近くにある場合は持ち込みすれば、最大150円の持込割が適用されるが、コンビニなどの取次店は介する人が増えるので避ける)
- 内容物に「楽器(ギター・ベース)」と入力または明記する
- ダンボールにネック側(上面)はどちらかを記載しておく(シールなどを張り付けても良い)
- 支払いはにゃんPayがおすすめ(にゃんPayで12%割引される)
以上のポイントを押さえて発送すればOKです。
特に「にゃんPay」の割引は大きいので、にゃんPayのアカウントは作成しておきましょう。
>> にゃんPayの公式ページ
【手順5】受け取る(受取人が他者の場合は無事到着したかを確認する)
今回、北海道~東京間の発送を依頼し、4日後に無事受け取りができました。
発送する時間によっては北海道→東京間は3日でも届くのかもしれません。これは発送時に確認できるので、時間が限られている場合はしっかり確認しておくことをおすすめです。
上記の画像でもわかる通り、ダンボールに傷(凹み)がありますが、肝心のギター・ベース本体には全く問題はありませんでした。傷・故障なども細かく確認しましたが発送時のままです。
ダンボールは外部からの衝撃を受け止めて、傷つけないという役割なのでダンボールに傷がつくことは問題ではないです。
一方、ここからわかることもあります。楽器をハードケースに入れ、ダンボールには入れない形を送る場合は、やはりエアキャップなどでカバーするべきです。ケースもなるべく傷つかないようにするにはダンボールorエアキャップが必須ということですね。
以上が、宅配業者さんにギター・ベースを配送依頼する流れとなります。
実際に発送する際には、お住いのエリアから配送先への料金をチェックしてみてください。
引越し時のギターの輸送と宅配業者を利用した配送の違い
宅配業者に依頼する場合と、引越し業者を利用し、家財道具と一緒に発送するのとでは少し状況が異なります。
宅配業者さんに依頼する際は、上記で解説した通りです。
一方、引越しの場合は、料金はもちろん梱包の方法も少々異なります。
アート引越しセンターを利用してギター・ベースを運んだ例
これも筆者の経験に基づくものとなりますが、事例をご紹介します。
引越しの際の状況は下記のようなものでした。
- ギター+ソフトケース×2本
- ベース+ハードケース×1本
- ベース+セミハードケース×1本
- ベース+ソフトケース×1本
- 冷蔵庫・テレビ・テーブルセット・パソコン数台・ダンボール30箱など家財一式
※ベース・ギターは合計5本です
上記のような引越しの際、まず最優先したい事項として「ギターとベースを安全に引越ししたい」ということでした。
アート引越しセンターと引越しのサカイの2社で相見積もりをしてもらいました。
「とにかく楽器を安全に運んで貰いたい」という要望を念頭に両社担当者さんに相談したところ、アートさんの方が「安全に運びます」という力強い回答が得られたため、アートさんに依頼することとなりました。
その際、ご担当者さんと梱包について相談したところ、「ソフトケースでもエアキャップなどで巻いた方が、より安全に運べます」という言葉を貰いました。
ハードケースのものも、ソフトケースのものもどちらも3重~4重で側面および底面までしっかりくるんで梱包。
楽器専用ダンボールは使用しませんでしたが、エアキャップが強力なガードを張り配送してもらったところ、海を越えた引越しでも無事無傷で配送が完了できました。アートさんに感謝です。
エアキャップはかなりの量が必要になるので、大きいサイズのものを購入して使用しました。
120センチの幅があれば、何重かに巻けばギター・ベースを包むのに十分です。
引越し業者を利用した場合の補償について
クロネコヤマトの配送では1個あたり30万円まで補償されますが、引越し業者を利用した場合、おおむね1000万円まで補償される場合が多いです。これは、多くの引越し業者が「運送業者貨物賠償責任保険」に加入しているためです。
高額な補償をしてくれる一方、保険が下りる条件や金額などが場合によって非常に複雑です。すべてを保障してくれるわけでもありません。
事故が起きないことが一番ですが、故障してしまった場合の補償について大きな差があることも理解しておきましょう。
30万円を超えるギターや、万が一のときに修復できない楽器は避ける
100万円を超えるような価値のある楽器は、ネックなどが折れてしまっては一大事です。
お金を払っても元の音を再現するのは難しくなる場合は多いので、ビンテージ楽器の場合は手間と費用が掛かったとしても自分で運ぶか、楽器専門のトランスポートに依頼するのが最善です。(楽器のトランスポート会社に個人が依頼するのは難しい場合もあり)
高額な楽器は、最低でもハードケースに入れて発送することが必須。
より安全に運ぶなら、費用や手間がかかっても自分自身が車で運搬したり、県内・都内など近くへの移動であれば赤帽や、個人経営で引越しを請け負っている業者さんに「同乗運搬」を相談して配送を依頼するのもおすすめです。
まとめ
ギター・ベースを発送する方法について解説しましたが、やはり一番安心して運べるのは自分自身で運ぶことです。
運ぶギターやベースが何本もある場合は現実的に厳しいですが、絶対に故障させたくない!という大事な一本だけは、車で運んだり、新幹線・電車で運ぶ方が安心かもしれません。
故障しても修理ができる楽器であれば、万が一のことがあっても保険などを利用して復旧させられますが、ヴィンテージ楽器の場合は熟慮するのがおすすめです。
以上、ギター・ベースの発送方法・梱包方法の解説でした。